ほぼ日記のようなもの

仕事に関係あったりなかったり

一発芸

中学生の三男、職業体験が終わりました。
長男はドーナツ店、次男はラーメン店で、2人とも飲食店業務だったけど、三男は老人ホームでの介護職を体験させてもらったようです。
1日目、2日目は何事もなく終わったのですが、「最終日…休みたい」と、三男。なぜと聞くと、ホームの皆さんの前で、体験の子供たちが一人ひとりステージに立って「一発芸」を披露しないといけない。それが恥ずかしいので拒否したいけど、そんな権利はないので、ならば仮病を使ってでも休みたいとのこと。
え、そのくらいやればいいじゃん!子供がやることなんて大したことしなくていいんだって!
とか、
あんたがズルして休んでも他の子達は同じように恥ずかしくても我慢して芸をするんだよ、1人だけそこから逃げるのは良くないよ!
とか言って説得し、簡単に出来る手品などを一緒に調べて練習しようと誘っても浮かない顔の三男。
簡単とか、失敗してもいいとかは分かってるんだけど、なんでそもそもそんな事しないといけないのかわからない…と言います。
まぁそう言われりゃ確かにそうだよな。なんで思春期の子供をわざわざ目の前に立たせて「さ、芸して皆さんを楽しませて」なんて無茶ぶりするんだろ。
場所が老人ホームで、「ご老人の皆さんを楽しませる」という突っ込みにくいフィルターがかかってるから「…そりゃ、やんなきゃ仕方ないでしょ…」となってしまうのですが、良く考えれば、みんなの前で一発芸をする、という文化は私だって嫌いです。
お酒に酔った人達が、後輩や部下に「なんか芸しろよ!」とか言ってたりとか。嫌〜い。早めに滅べばいい文化だと思っています。
昔、偉そうなおっさんが若者を1列に並べて、一人一人に一発芸をさせる、という場面を見たことがあるのですが。中でも本当に真面目そうな青年が、頭を深々と下げて「すみません、自分はどうしても出来ません」「芸がない人間で申し訳ありません」と謝ったのです。声は大きく、しっかりとした話し方でしたが、よく見ると彼の手は震えていました。
一瞬、その場にいた人たちがみんなポカンとして、しばらくしてから「ま…まぁまぁ座りなよ」みたいなぎこちない空気になり、そこで一発芸大会は中断してしまいました。
私はその青年に対して、勇気あるよなァ…と感じました。本当は謝る必要なんてないだろうに。
超そもそもなんだけど、自分より立場が下のモンに芸をやらせて楽しむってなんなんだろう。王様?
そんなことを考え出すと、(…まぁ、休ませていいか…)という結論に達しました。
生きていれば「一発芸しろよ」みたいな無茶ぶりは何度でもあると思うし、かかなきゃいけない恥なら今かいておいた方がいい、逃げるの良くない、単なる甘やかしだ!という自分もいるのですが…。そんないにしえの価値観、さっさとなくなった方がいいじゃんね、と思う気持ちの方が勝ってしまいました。
いい、いい、休みな。他の子達には悪いけど、よく考えたらお母さんだって一発芸なんてしたこと無かったわ、と三男に言うと、パァァァ…と一気に表情が明るくなりました。
今回のことはさすがに甘やかしかもなぁ…と、いまだ心の中に迷いはあるのですが。出来なきゃ出来ないで、「まわりと同じことが出来ない」とはっきりと自分で言える大人に育ってくれることを期待して。今回はズルをして休む代わりに、その辺について、三男ときちんと話し合おうと思います。